賃貸物件の契約を行う際に、重要になる契約形態。近年の賃貸住宅市場において「定期借家契約」は増加傾向にあります。
ただ、従来からある「普通借家契約」との違いについて詳しく理解している方は少ないのではないでしょうか。
今回の記事では、「定期借家契約」と「普通借家契約」の違いやそれぞれのメリット・デメリットについて解説していきます。
目次
契約の基本的な違い
普通借家契約
普通借家契約は、借地借家法で保護された従来からの賃貸借契約です。
最も大きな特徴は、正当な事由がない限り、家主が契約更新を拒否できない「正当事由制度」が適用されることです。
つまり、借主は安定的に住み続けることができる権利が法律で保護されています。
定期借家契約
定期借家契約は、1999年の借地借家法改正により導入された比較的新しい契約形態です。
契約期間が満了すると確定的に契約が終了し、更新がないことが最大の特徴です。
契約を継続する場合、新たな契約を締結する必要があります。
このような契約形態の違いは、それぞれ家主や借主においてメリットやデメリットが存在します。
今回は双方の立場から見てメリットとデメリットについて解説していきます。
借主側のメリット・デメリット
普通借家契約
メリット
・長期間の居住が可能。
契約期間が満了した場合は、契約の更新が可能なため、借主が住み続けたいと考えている限りは住み続けることが可能になります。それにより、生活の安定性が高く、地域コミュニティとの関係を築きやすい点はメリットです。
デメリット
・初期費用が高額になる傾向がある。
メリットでもお伝えした通り、一度入居すると長期的に居住することが可能になるため、家主にとってはどのような人に入居してもらうかが重要になってきます。そのような背景もあり、初期費用が高額になるケースもございます。
・更新料の支払が必要になる。
普通借家契約の場合、通常は2年契約になっていることが多いです。つまり、2年毎に更新料が掛かってくるのが一般的です。更新料は地域によって様々ですが、賃料の1ヶ月分がかかるケースが一般的です。
定期借家契約
メリット
・賃料が普通借家契約より安価な場合がある。
定期借家契約は入居できる期間が決まっているため、普通借家契約と比べると自由度が低くなります。そのため、契約条件は普通借家契約の物件と比べ、良い条件で募集されているケースが多いです。予め期間が決まっている人にとってはとても魅力的ですね。
デメリット
・契約更新の保証がない
契約時に予め再契約ができないことを伝えられる物件もありますが、基本的に期間満了に伴い、解約となります。
そのため、次の引っ越しの事も考慮して計画を立てることが必要になります。
・更新できた場合も、条件の変更の可能性がある。
これは普通借家でも起こりうる内容ですが、定期借家契約になると、更新ではなく、再度契約をするかどうかになるため、家主が提示した条件に納得できない場合は、解約になります。
家主側のメリット・デメリット
普通借家契約
メリット
・長期的な家賃収入が期待できる。
普通借家契約の場合は、定期借家契約と比べ、借主が見つかりやすい傾向にあります。また、契約の更新が可能なため、長期的に家賃収入が入ってくる可能性があります。頻繁に退去がある場合は、その分、クリーニングの費用なども掛かるため、長期的に入居してもらえることは家主にとってはメリットです。
デメリット
・契約終了が難しい。賃料の値上げが困難。
先述の通り、普通借家契約の場合、正当事由がなければ退去させることができないため、契約を終了させることは非常に難しいです。そのため、賃料の値上げをするタイミングも遅れてしまう傾向にあります。
定期借家契約
メリット
・期間満了後の退去が決まっているため、賃料の見直しを定期的に行うことができる。
賃料の見直しを定期的に行うことで、建物自体の価値を高めることができます。
デメリット
・借主が見つかりにくい場合がある。
借りる際に予め入居期間が決まっている人は非常に少ないため、定期借家契約に対して抵抗を持たれる方も多いと思います。そのため、借主が見つかるには少し時間がかかってしまうこともあります。また、借主が見つからないことで募集条件の見直しを行い、賃料なども下げていかなければいけない状況に陥ってしまうこともあります。
契約選択のポイント
①居住期間の見通し
定期的な転居を予定している方、一時的な居住という事が分かっている方は定期借家契約が適しています。
一方、居住期間の目途が立っていない方は、普通借家契約の方が安心です。
②費用面の考慮
初期費用や更新料、毎月の賃料など総合的な費用を比較検討することが重要です。
定期借家契約は賃料や初期費用が安価な分、再契約時に条件が変更される可能性があります。特に賃料の上昇が見込まれているようなエリアでは、大幅に金額が上がってしまう可能性もありますので、予め知識のある人に相談してみましょう。
③物件の質
定期借家契約の物件は、比較的設備が整っている物件が多い傾向にあります。物件の質を重要視される方は定期借家契約の物件も検討してみてください。
④契約の自由度
定期借家契約は契約内容が明確で、双方の権利義務関係が明確である一方、契約期間中の変更が難しい面があります。普通借家契約は、ある程度の柔軟性がありますが、その分、曖昧な部分も存在します。
今後の展望
賃貸住宅市場は、先述の通り、定期借家契約の割合が徐々に増加しています。これは、社会の流動性の高まりや、不動産所有者の資産活用ニーズの多様化に対応したものと言えます。
一方で、長期的な居住ニーズも依然として存在しており、普通借家契約の重要性も変わっていません。両契約形態は、それぞれの特徴を生かしながら、多様な居住ニーズにこたえていくものと考えられます。
まとめ
「定期借家契約」と「普通借家契約」は、それぞれに特徴があり、一概にどちらが優れているとは言えません。契約を選択する際は、自身の状況や将来計画を踏まえ、メリット・デメリットを十分に理解したうえで判断することが重要です。
また、契約締結前に不明な点があれば不動産業者や法律の専門家に相談することをおすすめします。適切な契約形態を選択することで、より快適な賃貸生活を送ることができるでしょう!
別記事にて「賃貸契約の流れは?スケジュールや必要書類を理解しよう!」もぜひ参考にしてみてください!